トリオ製トランシーバTS−500の修理記録(その1)(平成26年4月10日)


トリオ製トランシーバTS−500の修理記録(その1)(平成26年4月10日)

トリオTS−500の修理記録(その1)

平成25年8月からトリオ製トランシーバTS−500の修理を開始しました。
修理の予備機として他に2台TS−500本体を購入しましたが、3台すべてオリジナルでないことが判明しました。
今回一番改造個所が少なく、修理可能と思われる本機を選定し、修理することとしました。
何故、改造が多く存在するとかと考えると、1966年9月に販売されたトリオTS−500は、シャーシに直接部品を埋め込んだ最後のモデルで、大変改造がしやすい構造のものでした。
それ以降のTS−510からは、プリント基板による部品実装となっており、素人が簡単に改造することが困難になりました。
勿論、当時のアマチュア無線家の技術レベルも大変結構高い人が多かったことも大きな要因と思われます。
したがいまして、修復も単に行うばかりではなく、オリジナルに戻すことも必要となり修復は更に困難な作業となりました。
なお、トリオのTS−500については、VFOの使用周波数が12.240〜12.840MHzを採用したため安定性に欠け世間的にはあまり評判はよくありませんでした。

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まず、基本的なチェックとして電源系がショートしていないかテスターにて調べます。
200V系の給電が5〜6kΩの抵抗値を示していますが、この原因がブリーダ抵抗による分圧の可能性もあり、直ちにコンデンサーのリークの可能性を疑うこともできません。
他の900V,300V,150Vに関しては、電源系のショートの可能性はありませんでした。
事前チェックがある程度OKと思ったので、電源部と本体のケーブルを接続し、電源を起動しました。
すぐに、電源部で焼ける臭いと煙が発生したため、すぐ電源OFFし、すぐに原因の調査に入りました。
45年以上経過した電解コンデンサーなど、とても怖くて本来は使用しませんが、もはや交換部品は入手できない状況なので無理やり使用することとしました。
今回の故障原因は、整流ダイオードのショートでしたので、交換作業でOKとなりました。
交換部品で対応できる故障個所でラッキーでした。


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次の段階に進めると、パイロットランプや真空管のヒータ系の12Vの給電ができない状態であることが判明しました。
蛇足ですが、普通の真空管式通信機は、6V給電ですが、この時期の高級トランシーバは、米国輸出を目的として自動車の車載無線機の機能を必要していました。
勿論、トランジスターの機器以前のものですから、車のバッテリィからヒータの12Vを給電する必要がありました。
このため、真空管2本単位に直列接続し、12Vに対応させています。
ヒータ系は片方がアース接続されていることから、配線にショートがないか目視しましたが問題はありません。
また、ヒータ配線には2か所0.01μFの側路コンデンサーが入っていますが、このコンデンサーもショートしていません。
他の予備機のTS−500はヒータ電源に問題がないことから、万策つき、あきらめようとしましたが、ひょんなことから接続ケーブル端子の接触不良が判明しました。
この調査だけで6か月を無駄にしました。
また、この故障調査のため電源SWをON,OFFを何回も繰り返ししたため、SWのバネが折れた模様で部品の交換を余儀なくされました。
このような、故障修理中の事故には、心が折れそうになります。


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今度は、電源ONで少しすると本体の第二MIX部(V8の6BA6)近辺で焼ける臭いと煙が発生したため、再度故障個所調査に入りました。
ここで、改造されたIF-AMPもどきの追加モジュール(トランジスター回路)が怪しいと判断し、モジュールの撤去とオリジナル回路への復元を行いました。


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更に作業進めると、今度は送信部のドライバー部近辺で焼ける臭いと煙が発生しました。
この原因は、前項の追加モジュール(トランジスター回路)の電源を背面部にあるRELAY ADJ.のV/Rからとっていたようで、そこもオリジナル回路に戻したことが原因のようです。
RELAY ADJ.を適時調整したところ、正常に戻った。


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やっと、焼ける臭いと煙から解放されたので、本来の調査に戻り、まずは、各真空管の電圧チェックを開始した。
最初に高周波増幅段の6BZ6のプレートを測定したら310Vもあり、回路図を確認したところ問題がないようだが、設計目的がよくわからない。
また、キャリア発振の6BA6のプレートが60Vしかなく、何らかの問題があるものと思われたが、その他の受信系の真空管の使用電圧に関しては問題がないことを確認した。
次に、第一OSC,VFOの発振をオシロで確認し、問題がないことを確認した。
なお、VFOの注入の第二MIXは、回路上は1番ピンに接続するようだが、実際は7番ピンに接続されいていた。
ここで、SSGにより7MHzの信号をアンテナ端子から注入すると、正常に受信していることが確認された。
すぐさま、簡易アンテナで正式に受信を試みると7MHzのアマチュア無線が高感度で受信できた。
ただし、AMではOKであるが、SSBとなるとキャリアが抜けているようでうまく復調できない。
オシロで3390KHzのキャリア発振を確認しようとしたが、発振していないようだ。
まだまた、修復作業は続きます。(その1 完)
 


以下オークション取引記録です。

■ TS-500 100W SSB トランシーバー&PS-500AC電源 ■
投稿者:管理人 投稿日:2009年 9月21日(月)21時28分44秒



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落札コメント
昭和40年代のメーカー製のアマチュア無線機のオークションによる入手をしていたら、
トリオの真空管式のSSBトランシーバであるTS−500がほしくなった。
発売当時では、高校生の身分で購入することは出来なかったため、今でも当時のカタログ
のみ所有している。近頃、時々出展されているが何れもかなり保存状態が悪化しており
そろそろ修復して保存を考える時期にきていると思う。
程度の悪いものであれば、今回の落札金額程度であろう。
このTS−500もゆっくり時間をかけて修復するこことしたい。
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現在の価格 : 15,400 円
残り時間 : 終了 (詳細な残り時間)

入札件数 : 17 (入札履歴)

詳細情報
個数 : 1
開始時の価格 : 1,000 円
落札者 : mxxxxxxx / 評価:132 (評価の詳細)

開始日時 : 9月 13日 21時 48分
終了日時 : 9月 20日 22時 39分

出品者の情報
出品者 : subaxxxxxxx (自己紹介)

評価 : 66 (評価の詳細)

商品発送元地域 : 熊本県

入札者の順位 すべての入札履歴

1ページ中 1ページ目を表示 (入札合計:7件)
入札者 / 評価 入札額 個数 最後に手動入札した時間
mxxxxxxxx / 評価:132 (評価の詳細) 最高額入札者15,400 円 1 9月 20日 22時 29分
kur***** / 評価:1154 14,900 円 1 9月 20日 22時 32分
ja6***** / 評価:147 5,000 円 1 9月 20日 21時 43分
m0_***** / 評価:6 4,900 円 1 9月 20日 20時 29分
zs1***** / 評価:57 4,100 円 1 9月 20日 20時 55分
bmw***** / 評価:612 3,675 円 1 9月 16日 12時 59分
ywh***** / 評価:76 3,200 円 1 9月 18日 23時 16分
1ページ中 1ページ目を表示 (入札合計:7件

商品説明
TRIO TS-500 SSB トランシーバー、PS-500AC電源ユニット・スピーカーです。
長い期間物置に眠っておりました機器です。
電源は入りましたがその他は解りません。
古い機器ですので汚れ、錆び、傷など御座います写真でご判断ください。
ジャンクとして出品いたしますのでNC/NRでお願いします。
付属品 電源用ケーブル、TS-500 ,PS-500AC取扱説明書


2014/04/14


トリオ製トランシーバTS−500の修理記録(その2)(平成26年4月14日)


トリオTS−500の修理記録(その2)


オシロで3390KHzのキャリア発振を確認しようとしたが、発振していないようだ。
テスターなどで発振回路の回路定数を調査しましたが、特に問題はありません。
このことから、発振しない条件は外部要因と考えられることから、まず、真空管の交換をしましたが効果ありません。
次に、予備機から水晶発振子3390KHz交換したところ、発振することができました。
これで、SSBもキャリアがあるので完全復調することが可能となりました。
やはり、年代物の無線機の修理となると予備機を含む準備するこみとが肝要のようです。
今後の対策ですが、以下のとおりです。
当面、7MHzバンドの試験を行いましたが、各バンドでの調査が必要です。
また、エージングを行い、長時間運用が可能となるように各部品の調査を行います。
受信部がOKとなれば、送信部の確認試験をおこなうます。



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最後、前回撤去したIF-AMPもどきの追加モジュール(トランジスター回路)の詳細写真を添付します。
どう考えても、トリオのメーカー純正の部品とは思われません。
いまでも、疑問です。


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トリオ製トランシーバTS−500の修理記録(その3)(平成26年4月21日)


トリオTS−500の修理記録(その3)


受信機部の試験には、7MHzのバンドでしか試験していなかったので、まず全バンドでの試験を実施しました。
バンドスイッチの接触不良もあり、何度もバンド切り替えを実施することにより、28MHzバンド以外良好に受信することができました。
28MHzバンドは第一OSCが発振していないのが故障原因でしたので、早速予備機の水晶発振子を交換することにより復旧しました。

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受信機能としてはOKとなりましたが、マーカーで確認するとVFOの周波数が15KHzほどずれていましたので、校正することとしました。
取扱説明書にもありますが、VFO裏面のダストコアーとトリマーコンデンサーの微調整でメモリ校正します。
まさにアナログ技術ですが、マーカーさえあれば、周波波読み取りでもディジタル機とも遜色ありません。

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参考ですが、マーカーと受信機の高周波増幅段のグリッドへの接続は、昔アマチュアがよくやっていましたが、ねじり線による接続です。
メーカー製の実装では、初めて拝見しました。

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RIT機能など細かな試験も確認がとれたので、後はエージングによる長時間連続運用試験にはいります。

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ここまでの修復の感想ですが、想定外ですが水晶発振子を2個も交換しました。
それ以外の部品は、ほとんど故障品もなく、安定してます。
VFOが一般のトランシーバと比較して高い周波数なことから安定度が低いとおもっていました。
ところが、思ったよりは安定しており、また、高感度なので一般運用でも問題がないように感じられます。


トリオ製トランシーバTS−500の修理記録(その4)(平成26年5月6日)


トリオ製トランシーバTS−500の修理記録(その4)

最後になりましたが、トランシーバーの送信部の試験に入ります。
このようなトランシーバーの修理では、しっかりと受信部の試験をすれば、送信部の機能はほぼ大丈夫です。
最初にSWR計にダミーロードをつけ、マイクも用意します。
今回は、送信部の基本チェックも飛ばし、直接送信試験に入ります。









運用説明書にしたがって、まず、SSBモードで送信状態とします。
ところが、IPのメータが全く振れません。
最初からつまずきです。
次に、RF,HVのメータを確認しますが、すべてメータが振れません。
どうも、終段のステージが故障しているようです。
終段S2001の陽極電圧の測定には、送信部のカバーをはずす必要があります。
電圧は規定値を少し下回る800Vあり、特に問題はありません。
ヒータも確認でき、問題ありません。
今度は、裏面から終段S2001のSG,グリッド電圧を測定しますが、特に問題ありません。
電気的には、終段のステージは問題ないようですが、メータの測定する部分に問題があるものと推定できます。
送信部試験は無調整では10秒以下で実施しないと終段のS2001を痛めますので、短時間しか時間がありません。
何回も、送受信レバーを押下していると、IPのメータが表示するようになりました。
どうも、リレーのスイッチが何十年ぶりに開閉するので、当初接触不良が故障の原因だったものと思われます。
チューニングにより、CWにて、60W程度のパワーを確認しました。







本機を現用マシンとして採用することとし、副にトリオのTS−820とします。
といっても、電波を出すことはないでしょう。
TS−500てワッチしていると、経年劣化の影響もあるかもしれませんが、少しVFOの安定度に難があるようです。
 



参考文献

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