銘板の変遷


無線機器の中で銘板の位置付けは大変重要である。銘板をみることにより、その無線機機器の概略を把握することができます。
たとえば下記写真の銘板により、当該無線機を一度鹵獲されれば、敵方に製造年度、製造会社、生産台数等がたちどころに判明するこことなります。
にもかかわらず、日米ともに銘板の仕様についての変更については、長年配慮がなかったように思われます。







しかしながら、日本陸軍の航空部隊においては、膨大な兵器生産に伴う運用管理及び情報秘匿のため、従来の兵器呼称を単純化しカタカナの1〜2文字での呼称を大戦末期から行うようになりました。
この呼称のため従来の無線機の呼称は単に「ム」だけとなり、地1号無線機がム-65、地2号無線機がム-62、地3号無線機はム-63、地4号無線機はム-23、飛1号無線機はム−51、飛3号無線機はム−4と呼称変更されています。
銘板もム-XXの受信機、送信機の表記に加え、会社の商標、及び機器の仕様書番号のみと大変シンプルとなり、敵方に鹵獲されても製品情報を秘匿されるもものとなっています。
ム-63の商標はプロペラロゴマークであることから東芝、ム-62のひし形マークは住友電気(日本電気)であるが、当時の日本人なら容易に推測できるロゴマークが採用されています。












今回Yahooオークションに出展されているム-62(平成21年9月9日終了予定 出品者:okaguro9696)ですが、このロゴマークではどこの会社のものか分かりません。
戦後になっても会社情報を秘匿しているということでしょうか。



商標は「オ」と「キ」を組み合わせものと推測できますが、当時の軍需会社では「沖電気」が該当しそうですが、このロゴマークをみたことはありません。
今となってはわかりません。

次に航空機用無線機の飛3号無線機の後継機種であるム−4を掲載しておきます。
ここで重要なことは、銘板の情報が集まることにより、最下部の仕様書番号と思われるところの記載要綱は、左側番号が機器の大分類番号、右側番号が仕様詳細番号と推測できます。
例えば、「0502」は対空無線機、「0503」が機上無線機という意味あいと推定できます。
右側番号については、事例から4xxxxであるから製造番号ではなく、仕様書番号と考えるのが妥当と思われます。
ただし、左側の4桁の数字が省略されていたり、3桁のものもあり、少し強引の推論のようです。


最後に、安立電気の地1号受信機は地1号無線機・受信機→地1号受信機→地1号受信機(二型)→ム65→ム65改受信機と変遷したと記述しましたが、昭和19年度以降では生産現場が混乱ことが原因なのか、銘板の記載形式と名称付与と型式とが相違する受信機が見られます。
下記の銘板がその証拠です。この銘板の記載形式は敗戦直前のものです。





このことから、地1号受信機については、例外的に地1号受信機とム65の2系統の生産が敗戦まで行われていたと考えられます。
なお、地1号受信機とム65の相違は、AVC回路や水晶濾波器の有無があり、受信機性能にも大きく影響していました。



ム65 (2型)改




ム51(二型) 東京無線電機株式会社の事例(飛1号の後継機種)





参考文献
日本無線史 第九巻 電波監理委員会
65出典 これなあに? http://www.geocities.jp/kyo_oomiya/index.html

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