地4号無線機


地4号無線機受信機解説

 本機は地シリーズの中で使用された陸軍航空部隊基地局の固定無線機と異なり、昭和15年に空輸挺進部隊(落下傘部隊)が創設されたことに伴い、この部隊用に使用する可搬型無線機として計画されたものである。
 この地4号無線機には、地1、地3シリーズと機器構成、電気特性に類似が多く見られる。基本的には、軍の意向である近距離地上用無線機を基準に、地3号無線機をベースとして試作された。特徴としては、送信機、受信機、空中線、発動発電機及び蓄電器を4つの落下傘の付いたファイバー製の容器に入れて飛行機から投下することが可能であつた。
 外観は地3号無線機とよく似ているが、使用する真空管は、全てUZ−6D6で統一されており、電気特性よりも保守性の向上を主眼とし設計されたものと思われる。
 受信機の真空管の使用菅種の統一については、旧海軍がドイツを参考にした万能真空管「FM2A05A」や「ソラ」が有名であるが、旧陸軍においては、既存真空管Ut−6F7だけの受信機(飛1号無線機や4次制定の受信機等)に傾倒していつたようだが、当然のことながら電気的性能(内部雑音等)は悪化したものと推定される。
 このような管種の統一の開発動向の中で、唯一UZ−6D6のみの受信機は大変珍しい存在である。なお、地4号無線機は、大戦後期になると「ム−23」と呼称が変わっていった。

電気的特性
高周波増幅1段、中間周波1段、再生式検波、低周波増幅1段である。全てUZ−6D6で統一されている。
受信周波数帯域は、4,000Kc〜20,000Kcを3個の捲線(コイルパック)で分割使用する。
  @  4,000 〜 6,000Kc
  A  6,000 〜 9,000Kc
  B 9,000 〜 20,000Kc
地3号との大きな相違としては、地3号はUt−6A7による自励発振であったが、局部発振と周波数混合を分離した他励発振とし局部発振の安定化を図っている。
検波段は、中間周波増幅の利得不足の解消とBFO回路の省略のため、再生式検波を採用している。
電源供給については、他の機種では受信機専用の電源供給されるのが普通であるが、本機では送信機から電源供給されている。なお、通常は送信機からの高圧電圧をブリーダ抵抗で分圧し受信機電圧としているが、本機では、UZ−6D6、3本を使用した真空管による電圧の分圧を行っている。当時としてはブリーダ抵抗による分圧が一般的なことであり、なぜこのような高価な真空管による分圧方式を採用したのか設計思想がよくわからない。
また、受信機のみの生産も行われたようで、この場合電源供給端子が正反対の場所に設けられている。  

機械的特性
地1号無線機をコンパクトにした形状であり、外形寸法は横32.5×高さ17.5×奥行23.0である。
捲線部は、地1号、地3号と同様に横長の形状となっている。
可搬性を考慮し、各捲線の周波数範囲を広くし、3本の捲線ですむ仕様となっている。
同調機構のメインダイヤルは、100度の目盛りがついた回転ドラムを、ウォームギアャにより回転させ3連のバリコンと連動させている。
捲線部のコイルは、全てダストコア入りでトラッキング補正は、このコアを前面パネルから調整することが可能となっている。
なお、中間周波トランスは、依然C同調となっている。
全体の部品配置としては、高周波段、中間周波段から検波段まで直線となっており、各抵抗、蓄電器は側面に配置されているため配線も合理的にできる。


諸元

用途 空輸挺進隊用(落下傘部隊)
通信距離 150Km
周波数 送信 4,0 〜 20Mc
   
受信 4,0 〜 20Mc 
送信機 方式   水晶(又は主)発振−二段増幅
出力    A1   50W
       A3   10W
電波形式 A1,A2,A3
電源   0.6HP 単気筒2サイクルガソリンエンジン
      600V0.22A18V4A発電機      
受信機 方式   スーパー RF1 IF1 AF1
真空管   RF CONV  IF  DET  AF
      6D6−6D6−6C6−6D6−6D6
           |           
          6D6        
          OSC
電源   6V蓄電池及び250Vコンバータ又は整流器
空中線 逆L型 H=6m L=20m 又はダブレット
整備数
備考


回路図


地4号無線機受信機修復日記

来歴
戦後手を加えられ内部の部品は全て撤去されている状態の地4号受信機を横浜市のD氏から入手した。
前面パネルはメータのための大きな穴があけてあり、銘板もなかったが、すくいはバリコンと捲線6Mc〜9Mcだけは無事であったことからなんとか復元することが可能であつた。
前面バネルの修復は、アルミ板を切り出し、自動車用の粘土パテで補修し、小さい穴については、強度は弱くなるが直接パテで補修するだけで十分である。
内部の部品については、根気よく秋葉原に通いシールドケース、L型抵抗器、マイカコンデンサー等を購入したが、復元するまでの準備期間が楽しみのひとつである。
ところで、復元で困ったことは、中間周波トランスがないため、中間周波数がわからない点である。
地1号受信機の中間周波数が450Kcであることから、同じ安立電気であることからい450Kc近辺として戦後の455Kcの中間周波トランスで代用するこことした。検波は再生式検波であることから、再生用コイルを追加した。
局部発振を固定とし中間周波を調整した結果としては、現用では中間周波数480Kc近辺で使用しているが、ベースのデータ不足のため、設計時のデータとは異なるようだ。

正面

背面
本体筐体も保存状態が悪なったのか、錆びが発生し塗装もかなり剥離している。このため、残念ながら再塗装することとした。

裏面
中身は撤去されており、殆どの部品がなかった。このため、抵抗器やコンデンサーの正確な配置がわからなく、完全な復元の支障となった。

裏面
ここまで、部品化がないと自由に修復できるのも事実だ。


修復作業
修復後の正面
銘板や文字板などの復元には、地3号のものを利用した。左側にあった65型のメータ穴も補修のアルミ材とパテで修復したが、穴が大きく一度目は凹凸が目立ち不細工であったため、再度やりかえることとした。

本体筐体(ケース)も再塗装することできれいになったが、骨董品としての価値は大幅に低下してしまった。保存と復元のバランスは本当に難しいと思います。

正面

上部
IFTはトリオのもので代用した。

裏面
地1号に比較すると配線作業は大変楽であった。5球スーパーを組立てるレベルで完了。



修復作業記録
定期点検報告 (平成25年11月18日)


オークション落札結果記録(地4号無線機関連商品)

オークションウォッチ その
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参考文献
日本無線史 第九巻 電波監理委員会
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美

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