地二号・九四式対空二号無線機(二型)解説


地二号・九四式対空二号無線機(二型)受信機解説


1.
開発の経緯

 本機については、対空二号と地二号受信機が混同されて解説されています。この理由としては、対空二号と地二号受信機ともほぼ同一仕様のため、見た目では判別することが困難なことにある。
 また、昭和26年に電波監理委員会発行の「日本無線史」第九巻に記載されている九四式対空二号無線機の解説では第3次制定で地上部隊用と航空部隊用で2か所の記述があり、かつ、第4次制定の航空部隊用でも1か所あり、合計3か所の記述を総合的に理解する必要がある。
 昭和7年(1932)に十号丙無線電信機(対空用)として研究審査が開始され、昭和11年(1936)に九四式対空二号無線機として制定された。
 なお、陸軍においては、陸軍通信学校研究部が地上部隊も航空部隊双方とも無線通信器材の研究審査を所管しておりましたが、航空部隊の準空軍化に伴い陸軍航空技術研究所が昭和12年(1937)から独立審査するようになりました。航空部隊用として昭和15年(1940)から地シリーズとして整備されることとなり、対空二号の仕様をもとに後継として地二号を制定した。
 また、地上部隊としては、固定無線隊用として対空一号のみを使用し、航空部隊では逆に対空二号のみが使用され、後継の地二号に引継がれ併用され終戦に至ったというわけである。

2.電気的特性

 高周波増幅1段、中間周波増幅2段、検波、低周波増幅1段で電信用のBFOつきである。この真空管構成、回路構成については、同じメーカが試作協力した海軍の九六式空二号受信機とほぼ同一です。無線兵器については、用途別の仕様が必要ですが、やはり、メーカの固有の個性が発揮されているように思われる。

 受信周波数帯域は、140Kc〜15,000Kcを8個の捲線(コイルパック)で分割使用している。

  @ 140  〜  250Kc            D 1,600 〜   2,500Kc 

  A 250  〜  450Kc            E2,500 〜  4,500Kc

  B 450  〜  820Kc            F 4,500      8,500Kc

  C 820  〜   1,600Kc            G8,500        15,000Kc

また、@〜Cの捲線を使用する場合は、中間周波同調器第壱号(中間周波数:60Kc)を使用し、D〜Gの捲線を使用する場合は、中間周波同調器第弐号(中間周波数:対空2号が400Kc、地2号が450Kc)を使用している。

中間周波同調器は、IFT及びBFOコイルを一つの筐体に収容し、プラグイン方式となっている。
 回路構成で特徴的なことは、高周波段の入力には、対空通信のため可変抵抗器がついており、大幅な信号強度の変化に対応する目的で、地シリーズの基地局の受信機だけの機能です。

周波数変換部は、専用のUt6L7Gの7極管が採用されています。局發部UY37の3極管を使用している。

BFOの注入が中間周波増幅段の第二段目となっており、一般的な検波段への直接注入をしておりません。検波段から低域フィルターを介して直接UZ41で低周波増幅を行っている。
 送受信の制御としては、送信時に受信機の空中線と受話器を直接アースする簡単に機械的におこなっている。
 電源部は、プラグイン方式として、6Vの蓄電池を使用したロータリーコンバータ方式と商用100Vからのトランス方式の2方式で+250Vの直流出力を供給している。

3.機械的特性

一般的な通信機器の形状からみると、大変特異な形状であることがわかります。奥行きを極力狭め、その結果横幅と縦幅がほぼ正方形の形状となっている。
 この設計の理由として、電源部のプラグイン方式のため、一定のスペース確保が原因であるように思われます。また、奥行きを狭めたため、逆に全体のスペースがなくなり、捲線部(高周波部プラグインコイル)は縦長とし、他の地シリーズの横長と比較すると、この点でも特異であることがわかる。
 同調機構は、他の地シリーズと異なり、簡易なバーニアダイヤルとなっている。
 全体的な部品配置は、高周波部と中間周波段以降を完全に分離し、高周波の回り込みを防止しており、抵抗器や畜電器も整然と配置していますが、逆に配線は複雑化している。

4.特記事項

前面パネルからみると対空二号には空中線端子が1個しかなく、ブレークイン通信用のリレーもありません。
 また、AWC会報誌97年No.4のTさんの記事にもあるように、BFOの発振がやはりオリジナル回路ではできませんでした。Tさんの疑問のように、三才ブックスの「魅惑の軍用無線機」の地二号の掲載内容ではバンドスプレット用バーニアダイヤルやメータはオリジナルではありません。また、「日本アマチュア無線外史」のように九四式三号巳無線機を幻の地二号受信機と誤記しています。個人の記憶も戦後50年以上を経過すると曖昧となりやすく、旧軍用無線機器も散逸しており、機器の技術面をもっと正確に後世に残す必要を痛切に感じている。


諸元

用途 対空用及び対地上用
通信距離 対空500Km
周波数 送信 2,5Mc 〜 10Mc
   (1型の場合 1,5Mc 〜 10Mc)
受信 140Kc 〜 15Mc 
送信機 方式   水晶(又は主)発振−二段増幅
出力    A1   180W
       A3    40W
電波形式 A1,A2,A3
電源   2.2HP 単気筒2サイクルガソリンエンジン
      1,500V0.3A,750V0.3A,12V25A 発電機      
受信機 方式   スーパー RF1 IF2 AF1
真空管   RF CONV  IF   IF DET,AF AF
      6D6−6L7G−6D6−6D6−6B7−41
           |             |
           37            37
          OSC           BFO
電源   6V蓄電池及び250Vコンバータ又は整流器
空中線 逆L型 H=10m L=20m 又はダブレット
整備数
備考

正面








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参考文献
日本無線史 第九巻 電波監理委員会
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
魅惑の軍用無線機・第一巻 三才ブックス

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