94式5号無線機


解説

 本機は歩兵用を本来の目的としているが、砲兵用として観測所と放列間、歩砲共同用に、騎兵用として小部隊用に工兵用として渡河作業指揮用等に使用された。大量に生産されたため、現存数もこの機種が一番多いようだ。ただし、電池管のため真空管の確保が大変であり、特にUZ−133Dは貴重品種で高額で取引されている。


諸元

用途 歩兵用
通信距離 10Km
周波数 送信 900 〜 5,000Kc
   (常用1,000 〜 1,500Kc)
送信機 出力   A1 1.3W
真空管  Osc   
       UZ12C(UX−12Aの複合管)
       A1の場合両3極管パラレル
       A3の場合1方が発振、他は変調管となる。(陽極変調)
      電源   手回発電機 18W
            150V   80mA
            6V    1A
受信機 方式   オートダイン RF1,AF2
真空管  RF    Det    AF AF
      134   109A   133D 
電源   平角4号×2(1.5V)   B18号×4(90V) 
空中線 逆L  H=2m,L=15m
地線 15m
整備数 5,500
備考 本機は歩兵用を本来の目的としているが、砲兵用として観測所と放列間、歩砲共同用に、騎兵用として小部隊用に工兵用として渡河作業指揮用等に使用された。

回路図


94式5号無線機修復日誌

来歴
本機は、平成5年頃岡山県倉敷市の襤褸(現在は昭和大戦博物館設立準備基金)というところから入札により落札した1品である。

受信機
受信機の本体ケースと収納袋。非常にコンパクトにできている。当然歩兵用の携行品のことはある。

正面
受信機の正面バネルであるが、塗装が剥離している。触れば、どんどん剥離する。再塗装したい。でも、我慢すべきか。

正面
特に、欠落部品はない。真空管さえ、まともであれば、すぐに修理可能だ。

背面
内部は保存状態は良好だ。真空管UZ133Dは、今では貴重品種でこの球が切れていたら、修復も困難となる。

裏面
トランス類が切れているか心配だ。戦前・戦時の民生ラジオでは半数がトランスの断線となっている。


修復開始 平成20年2月

入手して、15年間全く手をいれず、保管しつづけていたが、突如修復に目覚め、平成20年2月から修復を決意した。
修復の常道としては、まず、回路図があるのかどうかが重要だ。上記の手書き回路図を本ページに掲載したが、当機器はに回路図が添付されておらず、戦後のアマチュア無線家が回路図を実物から書き起こしているようだ。
回路図については、米国の戦争省発行のJapanese Radio Set Model 94 Mark 5 Wireless Setに詳しく記述されており、信頼度ももっとも高いものといえる。
また、この受信機は短波帯の受信が可能であるが、アマチュア無線家には人気がなかったようだ。
この理由はひとえに使用真空管が軍用の電池管に起因している。 この種の電池管は軍用目的のため、戦後メーカは製造していないし、地方のアマチュア無線家では入手も困難だったことと思われる。低周波増幅用のUZ-133Dはこのため、今では貴重品種となり、高額な取引となっている。
(旧軍の無線機では、地1号、2号受信機などの6.3V管を使用した機種が今でも人気である。)
この受信機の特徴は、まず電池管を使用しているため、電源は内蔵の乾電池専用で、外部端子からの電源供給ができないことにある。野戦の軍用通信のため、当然商用電源などの利用は想定されていないが、せめて手動の手回し発電機などの利用も想定すべき機能と思うが、全て終わった世界での戯言か?
ある戦記に、外征のため大量の乾電池を港に集積している話があったことを思い出したが、兵站が確保される戦場ならいざ知らず、兵站が困難な戦場では、まず最初に通信ができなくなることになる。
これに比較して、このシリーズの最下位の94式6号無線機は、乾電池でも、手回し発電機でも共用可能の機種であった。

修復開始としてまず、基本的なことであるが、トランス類の断線の有無、抵抗器の測定、コンデンサー類のショートの有無、回路図に照らして回路チェックなどの実施し、不良部品の交換等を検討する。
平行して、使用真空管のヒータの断線の有無を確かめる。
ここでショックだったのは、3本全ての真空管が断線している事実が判明した。普通は、1本多くて2本であるが、最悪なことに全本とは如何なることか!!!!
後でこの理由を推理することとしたい。


シールドケースがなかったので、予備のものを手当てした。

トランス類が無事だった。コンデンサー類は結線されており、容量測定ができないので、最低ショートの有無の確認をしないと、B電源を入れたときに、抵抗類が損傷する恐れがある。


涙を呑んで、予備真空管を用意した。


故障箇所の特定
UZ-133Dのヒータ線が断線していた。また、UF-109Aの再生検波のグリツドリーク抵抗器が断線していた。この2点の複合故障であった。
最初に、グリツドリーク抵抗器が断線でこの受信機に使用されなくなったと推定される。
戦後に、この状態でヒータ線が断線し、戦後の素人(アマチュア)がこのヒータ線をB電源に接続したため、電池管全てのヒータが溶解したものと思われる。当然真空管の補充はできない。それで全てが終わって、古物の対象品として流浪の旅として流れ着いたところが岡山県倉敷市の襤褸といったところでしょうか。

修復を終えて(平成20年3月10日)時東京大空襲の日となったのは、偶然のことか。

電源や受話器の接続は、短いバナナチップ端子で容易に接続可能だ。使用するととても感度もよいが、分離はよくない。
少し、発振気味となりやすく、更に部品の交換が必要のようだ。
電池類の入手は、今はやりの古典ラジオの修復と同じで、9Vの角電池を百円ショップで大量購入すればいい。
昭和14年度製なので、約70年の月日がたっているが、今後も大切に保存していきたい。


94式5号受信機パートU修復日誌

来歴
本機は、平成15年頃広島の松本無線ジャンクセンターにて購入したものである。外観はオリジナルに近いものであるが、銀色に塗装され、ケースもかなり改修の穴があいていた。また、内部の部品はほとんど撤去されており、内部にはMT管の5球スーパーが組み込まれていた。

修復について
本機のように、ほぼ復元は困難な状況にあるものが、色々な条件によりほぼオリジナルに近い程度のもに復元できることを紹介することにより、一つでも貴重な旧軍無線機の保存のお役に立てればとの思いで、復元過程を紹介することとする。
今回は、上述の修復と平行し、平成20年2月から4月にかけて修復を行ったものである。

購入時の状態
ケースの正面の状態であるが、下部にスピーカ用の穴を開けている。

オリジナルでは、外部との接続用の穴が無いため、接続端子用の穴があけられている。

背面部
ごっそり下部の表面が切断されている。

本体正面
真中のパイロットランプと右下のつまみはオリジナルではないが、全体的に正面には手が加わっていないのが、唯一の救いだ。

上部
5球スーパーの部品は撤去した状態。肝心な真空管部のシャーシー部が切り取られている。

本体背面部
中央部が2連のVC、その上がバンド切替SWとなつている。

本体下部
オリジナルの電解コンデンサー群が残っていた。復元のためにも、せめてもの救いだ。

正面
剥離剤防護のための準備作業の様子。

左側面部
この穴も剥離剤から保護するのため、内部から紙を貼る。

正面
中央下部の穴をパテ材で修復。

左側面部
小さな穴はパテのみ、大きな穴はアルミ材をベースして穴を修復する。

背面部
背面部のパネル切断部分の修復の様子。

背面部
サンダーにより、表面加工した様子。

上部
サンダーにより、塗料をはがしている過程。剥離剤とサンダー等により塗料を除去。

左斜部
表面加工中の様子。

使用した部材

正面
VC及びバンド切替SWを全てはずした状態。

上部

背面部

下部

取り外したVC

取り外したバンド切替SW

左斜め
塗装中の様子。

左背面部

ケースと本体の塗装の様子・

復元について
この状態では肝心なコイル類やUFソケットなどの手作りとなり、オリジナル性に乏しいものとなるが、たまたま、秋葉原のラジオデパート2階の元某店のO氏から旧軍の無線機の部品を取っておいたものを購入した。このときは、部品のオリジナルの機種は判然としなかったが、今回修理をしている中で94式5号受信機のものと特定ができた。やはり長年こつこつと収集することにより、このような復元作業で役立つこととなる。

コイル、ソケット類の部品

背面部
真空管部のシャーシー部を復元した様子。

左側面部
同じく真空管部のシャーシー部を復元した様子。

下部
ソケットを装着した様子。

正面部
部品を装着した様子。

上部
部品を装着した様子。

背面部
部品を装着した様子。

背面部
部品を装着した様子。

下部
部品を装着した様子。トランス類は一部オリジナル部品を揃えることができなかった。今後、入手した段階で交換できるように部品配置もできるだけオリジナルなものとしている。

修復後のケース正面

修復後の本体正面

上部
配線済

背面部
配線済

背面部
配線済

下部
配線済

試験中
電池類を装着して回路の試験をしているところ。

最終正面
下部に各バンド単位の周波数校正表を別の機種から添付した。

最終側面の構成
側面の穴が完全に修復されている。

上部
最後に銘板を作成(偽造?)して完成とする。

回路図
米国の戦争省発行のJapanese Radio Set Model 94 Mark 5 Wireless Seを掲載する。

修復を終えて
平成20年4月15日修復完了。性能的なものはほぼオリジナルなものと同等なものと思われる。本機は、超小型サイズの中で部品が実装され、余裕空間が全くない状態のものであり、戦場での機器の保守を考えると非常に困難であつたものを思われる。特に、今回配線をしてみて気づいたことは、配線のつど、部品をはずし半田する羽目になることが何度もあった。故障部品によつては、部品をばらばらにする必要がある。このような構成では、生産能率にもかなりの影響があつたものと思われる。
今後は、送信機を復元してアマチュア無線でもやってみたいものだ。
なお、受信機の制御については、米国のBC1000でも同様だが、電池管(直熱管)であることから、送信時にはフィラメントを断にするだけの簡単な構造となっているが、日米とも同じ制御方式であるところに当時の技術の一旦を垣間見たような気がした。


送信機
正面
これも、塗装が剥離している。触れば、どんどん剥離する。

上部
送信管UZ−12Cがない。バリコンには、ダスト・カバーがついている。とても、丁寧な作りである。

背面

裏面
小さい筐体にびっしり部品が配置されている。コンパクト性は大切な要素だが、部品が壊れていたら修理が大変だ。

今後の修復計画
当面、この状態で保存するが、送信機についても動態保存できるように検討するこことした。


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参考文献
日本無線史 第九巻 電波監理委員会
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
米国の戦争局発行のJapanese Radio Set Model 94 Mark 5 Wireless Set

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