92式特受信機修復


修復前

(平成21年4月5日)
M様

ご連絡ありがとうございました。 無線機では配線のときが一番楽しい時ではないでしょうか?
板金等のメカニカルで苦労してやっと配線ということでほっとしたひと時です。
小生も今92特ではネジが腐食して取れないので難儀しています。
鉄、真鍮ネジを回すとみんな切れてしまい頭だけとれてネジが中に残っています。
真鍮製はまだしも、焼の入っている鉄ネジには困ったものです。
フライス盤のミルで強制的にネジを切りこんで行かなくてはなりません。
一般のドリルではネジのところからズレてしまい、ネジを残しネジでないところに穴があいてしまいます。

92特を今手掛けていますが雨ざらしに置かれたものか、保存状態が良くなかったのか、腐食があるのでリベットを外し全て取り除かないとアルミの腐食部分の削りだしができません。
部品は大体ついていましたので何とかなるとは思いますが、お願いすることがあれば連絡を差し上げたいと思います。その節はよろしくお願い申しげます。

S.K

(平成21年4月7日)

M様

写真は到着してすぐに撮ったものです。部品等は真空管、コイルが無いのをを除くとほとんどいじってない状態で助かりました。
ただし、雨ざらしになっていたのか保存状態が悪く、アルミの腐食が進んで各所で盛り上がっているような状態です。
そのような個所を一つずつリベットをはずし、腐食個所を削り取っていかなくてはなりません。
気の遠くなるような作業でしょう。
それに前にも申し上げましたようにネジが取れないので大変です。
電気部品も断線とかあるでしょうが、外形が保っていてくれているので復元は可能です。
当分楽しめます。
Mさんにご協力をお願いすることがあるかもしれませんがその節はよろしくお願い申し上げます。
これを機会にCADで描いた回路図の定数を確定したいと思います。できましたらお送りいたします。

S.K


1.正面

2.上部

3.背面


修復作業報告No01(平成21年6月1日)

小生の92特は腐食がひどく、全バラシで腐食個所の除去です。 苦労中の写真をご覧ください。

1.天蓋部分

2.天蓋の腐食部分の拡大写真

3.下部構造体(本体)
完全にばらした状態です。

4.上部構造体
アルミのダイガストです。

管理人コメント
確かに大変な作業ですが、根気と根性で頑張ってください。


修復作業報告No02(平成21年11月8日)

(平成21年11月1日)
M様
小生の92特ですが時間がかかりましたがやっと先週最後のツマミの銘板ができましてオリジナルに近い色(オリジナルは白いセルロイドが黄色に変色している)に着色したところです。
今までに途中、短波帯のバリコンのシャフト(ベークライト)を旋盤で切り出したり、RFプリセレクター部の裏板を作成したり、筐体を取り外して腐食部分を取り除いたりと大変な作業でしたが作業終了の域に達しています。
電気的には使用部品はすべてオリジナルのままで動作できています。
別の手持ちのコイルを使って短波、中波を聞いています。出力の238だけはないので41で代用しています。
完成後写真をお送り申し上げます。
Sより

(平成21年11月2日)
M様
ご連絡ありがとうございました。小生も38はあるのですがピンが違い(5Pで頭にグリッドキャップがある)使うのは断念しました。
電流特性が多少違いますが41がそのまま使えますので使っているという次第です。38のお送りするとのお申し出ありがとうございます。 上記の次第ですのでお気持ちだけをありがたく頂戴申し上げます。
それにしても92特だけで半年以上かかりきりで費やすというのも家内などに到底理解できません。
コストに換算したら一体いくらかかったのかわかりません。
これも病気でしょうか。
Sより

(平成21年11月7日)
M様
本日修復完了した92特の写真を参考までにお送り申し上げます。修復途中の写真も撮ってあるのですが整理がついておりませんのでとりあえずできたものの写真をお送り申し上げます。
Sより


管理人コメント
修復開始から約6ヶ月かけて完全復元された92特受信機の雄姿です。ここまで復元できるのかという最高の見本です。特に筐体については、保存状態が悪い場合には経年劣化にともなうアルミの酸化による腐食により、表面が白濁しボロボロの状態になり、復元が困難となる原因となります。また、螺子についても錆によりはずすことも困難となり、無理に力を加えると螺子山が損傷し、部品をバラスことが出来なくなります。
今回は全ての困難を乗り越えて復元が完了しました。

1.正面

よくここまで綺麗に復元されました。

2.上部の前部コイル収容部

コイル群は手持ちのもを利用されたのことです。

3.上部の後部真空管収容部

真空管は直線上に配置されており、一つの真空管単位に完全シールドされております。

4.銘板
沖電気の昭和18年3月製とよみとれますが、この時期までは生産材料も十分確保されており、最高の品質で製造されていたようです。

5.後部

ブリーダ抵抗のカバー部など全てオリジナルな状態です。

6.背面部の内部

抵抗器類の大部分は脱着式で、背面部に装着し、内部への排熱を考慮していました。

(平成21年11月3日)
以下管理人から茨城のSさんへの質問の回答です。

S様へ
92特の配線はアースを浮かせような配線でしたが、どうゆう目的なのかよくわかりません。
Mより

M様
ご連絡ありがとうございました。その通りです。92特はマイナスはグランドからういています。当時の艦艇の電源は直流100V, 200V電源でマイナスはグランドから切り離されていました。
これは塩水等で艦艇のボデーが腐食しグランドに電流を流すと部位によっては電位が生じ火災、安全、電食等の問題が生じます。このためすべて電源はプラス、マイナスで供給されていたようです。
自動車も同じでバッテリーの段階でマイナスをグランドにつないでも離れている場所ではシャーシーは0Vにはなりません。電子機器はこの点を考慮して設計しないと思わぬトラブルに遭遇します。
Sより


参考文献
日本無線史 第十巻 電波監理委員会

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